平成9年当時のわが国経済は、穏やかな回復基調にあった。
当時の経済企画庁発表によると、我が国経済は、需要面をみると、個人消費は緩やかな回復傾向にあるものの、一部には消費税率引上げを控えたとみられる動きもあった。
企業の業況判断には、先行き慎重な見方があるものの、緩やかな改善がみられていた。雇用情勢は、引き続き完全失業率が高い水準で推移するなど厳しい状況にあったものの、改善の動きがみられた時期である。
小売売上面からみると、全国百貨店販売額(店舗調整済)は前年同月比で12月1.1%減の後、1月 0.3%増となった。また、チェーンストア売上高(店舗調整後)は、前年同月比で12月 0.4%減の後、1月 0.8%増となっていた。
消費財の販売をみると、乗用車(軽を除く)新車新規登録台数は、前年同月比で2月は15.1%増。また、家電小売金額は、前年同月比で1月は 3.3%増。レジャー面を大手旅行業者13社取扱金額でみると、1月は前年同月比で国内旅行が0.5%減、海外旅行は6.3%増となっていた。
企業倒産の状況をみると、件数は、おおむね前年並(平成9)の水準で推移していた。
銀行取引停止処分者件数は、1月は 864件で前年同月比9.6%増。業種別に件数の前年同月比をみると、小売業で13.2%の減少となる一方、卸売業で28.9%、建設業で15.2%の増加であった。
景況は緩慢ながらも、回復基調にあったが、宝石業界は総じて低迷していた。宝石業界動向は、平成8年に引き続き業績は総じて長期低迷していた。特に、大手チェーンストアの伸び悩みが目立っていた。
これは、回転差資金の活用、銀行借入金等、過度な他人資本依存で出店したが、個別店舗レベルで売上不振であった為。
また、一方、生業・家業店の財務的な行き詰まりが顕著であった。資金繰りを補う不動産担保の評価割れが、経営を圧迫させていたのだ。多くの小売業は、ダイヤモンドの輸入価格高騰に対処する為、仕入れを国内品、低価格品へシフトし、採算を確保しようとの動きが見られた。
業界全体は、相変わらず過剰在庫による資金繰難、経常収支の悪化が是正されていない。売れ筋は、素材では、ダイヤモンド、パール、カットリング等、範囲が限られてきていた。
売れ筋プライスラインは、3万円から50万円までと、消費者の高額品離れは加速化していた。しかし、宝石という商品特有の性格から、デザインの独自性を提案する「売る工夫」は成功していた。商品構成の全面的な見直しの必要が迫られていた時期であった。
不況期は、即効性のあるプロモーションより、経営基盤の強化充実を図らなければならない。
具体的には、人材の高度化、店舗のグレードアップ、魅力ある商品の品揃え、資金調達の健全化、必要情報の絞り込み等に取り組まなくてはならない。
株式会社 ココ山岡宝飾店の倒産
平成9年1月10日㈱ココ山岡宝飾店の倒産は、業界内外に衝撃を与えた。前日から当日早朝にかけて、各店舗より商品を引き上げた後、従業員に配布された文章は、「従業員のみなさまへ早朝より出社いただき誠にありがとうございます。しかしながら新しい商品等は到着いたしません。甚だ残念ながら当社は平成9年1月10日午前10時をもちまして破産いたしました。(以下略)」である。
株式会社ココ山岡宝飾店の概要は次の通りである。
商号 株式会社ココ山岡宝飾店
設立 1967年4月
資 本 金 9,900万円(95年3月期)
事業内容 貴金属、宝石、アクセサリー、その他装身具類、販売並びに修理加工業
決 算 期 3月31日
従業員数 1,160名
関係会社 ㈱山岡宝飾 ㈱山岡商事
同社は、ダイヤモンドを中心としたCM戦略を展開し、高度成長経済、バブル膨張経済を背景に、急速に成長した。平成4年には、630億円の年売上高を記録する。
しかし、平成6年より売上高が急速に低迷し始める。
倒産原因を整理すると、次の3点にまとめられる。
1.売上高低迷
同社は、ピーク時、年630億円の売上高規模を誇っていたが、宝飾業界を取り巻く景況の悪化等により、平成8年には、270億円にまで下がっていた。
しかし、店舗数、従業員数を見ても、ほぼピーク時と変わっていない。粗利益が激減しているのにもかかわらず、固定費の削減が出来ていない。完全な非効率経営による資金繰り悪化だった。
2.買い戻し保証制度
同社の急速な発展には、独自の買い戻し保証制度があったのは周知の通りである。しかし、その制度は次の前提によっていた。
(1)宝飾市場は拡大し続ける。
(2)㈱ココ山岡は、右肩上がりの企業成長をし続ける。
(3)顧客は、買い戻し制度によって、増加し続ける。
(4)顧客は、買い戻し制度によって、都度、ランクアップし続ける。すなわち、高額化し続ける。
(5)単純な現金化のみを求める顧客は、限りなくゼロに近い。
仮に、現金化を求める顧客が存在しても、接客によって、商品の交換に持ち込める。
バブル膨張経済が破綻した直後から、同社の成長要因であった買い戻し保証制度の前提条件が崩壊し始めた。同社の主力商品は高額のダイヤモンドであったが、客離れが予想以上に激しく、かえってこの制度もまた、資金繰りを悪化させた。
3.ダイヤモンド環境の悪化
ダイヤモンドは、単純なCaratによる価格競争の時代が終焉し、Cut、Clalityの品質競争へ、時代が変化して行った。
市場は、エクセレントが中心になって来たが、同社の買い戻し保証では、旧態依然のカッティングのダイヤモンドを、100%の価格で買い戻さなければならない。それら買い戻したものを店頭で販売するには、エクセレントカットに再カットしなければならず、その場合は、Caratが下がるのは当然の事となる。激化する競合状況の中で商品力を弱めるものとなった。
また、それを補おうとする同社のハイタッチ接客方法が、強引過ぎる悪評があり、客数の大幅減少を招いた。
今回の、ココ山岡の倒産は、一企業の問題にとどまらず、消費者の、宝石業界への不信を募らせた。地域専門店は、立地する地域にあって、長年の顧客の愛顧の賜物として存在する訳であるから、商品の品質鑑別等、ナショナルチェーンより、はるかに、厳しいものである事を、訴えて行く必要がある。
ココ山岡倒産が現代に教える事。
経営には、変えてはいけないものと、変えなければいけないものがある。自社の優位特性、顧客から見た価値は変えてはならないが、新商品を導入し、常に商圏市場に変化を与えていく。顧客は、新しい変化に敏感だ。変化しつづける企業が成長、発展している。企業の目的は、存続成長である事を銘記されたい。
fideliからの移動記事だが、その後、ジュエリーマキも倒産した。予定通りだと今日は広島にいるはずが予定が違って明日になった。 経営破綻の話題はしたくはないがいわゆる財務無視の拡大路線は一歩間違えると倒産の道を走る事になる。
回転差資金に関しては後日説明する。

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